ALONES
「…海に還すわ。」
渋々…と言わんばかりに、海藻をトランクから取り出して、一般常識的な荷物を詰め始めるキーラ。
中にはギョッとするようなものもあったけれど、そこは目を瞑る事に。
それから準備を進める事数時間。
彼女に手伝って貰いながら、家のあちこちの後始末を終えて、5年間過ごした家を後にする。
――長かった。
と素直に思う。
ここから出る日が来るなんて、とも。
ここが自分の墓場ではないと考え直したのが数日前、
美しい人魚と出会ったのも数週間前。
人生何が起こるか分からないというのは、まさにこういう事なのだろう。
「…寂しい?」
キーラが僕の手を握ったまま呟く。
でもその寂しささえも名残惜しい程に、今は清々しい気分だ。
だから首を振る。
もう二度と帰らないだろうこの家に、孤島に、別れを告げる。
「もう、二度と帰って来ないからな。」