ALONES
今からほんの1時間前くらいのことだ。
孤島から出てすぐに、僕たちは行き先について話し始めた。
—巨大な大陸の東側の殆どを占めている大国、オルフィリア王国。
大陸の西にある半島が唯一の国土、ロレンツェ公国。
治安はまずまずと言った二国は言葉も通貨も共通している為、住む、という面ではあまり大差は無いように思える。
とはいえ、同盟国との繋がりが大きいオルフィリアの方が、最先端の技術力と生産力も兼ね備えているだろうし、また、輸出入も盛んだろう。
一方、ロレンツェは小国ながら、観光国として多くの国に名を馳せている。料理はおいしいし、独特な風土のせいか観光名所が多い。
また、半島と言う事もあり、水と共存した美しい街並みはオルフィリアに引けを取らない。
そうキーラに説明した所、
『ロレンツェに行きましょう。』
あっさりと決まってしまって。
どうも彼女は“料理がおいしい”という所に惹かれたらしい。
『人間は嫌いだけど、美味しい食べ物は好き。』
つーんと頬を膨らませながらもどこか楽しそうな彼女に急かされて、僕は地図とコンパスを取り出し、目を凝らした。
――ここからロレンツェに向かうには、北東に向かって進まなければならない。
それに、中々距離もある。
最悪、何日間も漂流する事になるのではと嫌な予感が頭をよぎったが…。
『着きそうになかったら、私が泳いでロレンツェまで連れて行ってあげるわよ。』
海の道の専門家が自慢げにそう言ってくれるのなら、何も心配することは無いだろう。