ALONES
初めて聴く歌だった。
僕らが使っている言葉とはかけ離れた言語だった。
それなのに、酷く懐かしく…愛おしい。
抑揚のある歌声は、僕の五感の全てに浸透してゆく。
そして歌声は僕だけに留まらず、彼女を中心とした万物を、魅了した。
――不意に、黒い何かが舟底にあたった。
僕は驚いて舟にしがみつくけれど、歌い続けるキーラは、わあ、と大きな青い瞳をいっぱいに開けて、白銀の髪をふわりと揺らす。
『…うわ、』
見渡せば、黒いヒレをもつぬるぬるとした感触の、大きな魚らしき物体が海のあちこちで飛び上がり、
僕らを乗せた船は、あっと言う間に彼らに囲まれてしまった。
勿論それだけではない。
魚の大群、美しい鳥たちの群れ、
見たことも無い光景が、僕の視界を埋め尽くす。
キーラはそんな彼らに触れながら、ただただ花のような笑顔を零し、歌で挨拶を交え、オールを胸の前で握りしめてもっと大きな笑顔を咲かせた。
――――、。
胸が高鳴った。
彼女の笑顔を何に変えても守りたい。
そう誓い、願った。
歌う可憐な姿は、真珠のように、白百合のように、蝶のように。
まるで、夢のような存在の君を見みつめる。
だだ…それだけ。
ただそれだけで…僕の世界は鮮やかに変わり続けてゆく。