ALONES
それからはもう、あっと言う間だった。
あれよあれよと言っている内に、舟は彼らにどんどんと連れ去られ、僕たちは為すがまま海を渡り、挙句の果てに砂浜へと打ち上げられた。
―――そして、今に至る訳だが。
キーラはルンルンと鼻歌を歌いながら、脱げた靴を履き直し、僕はトランクケースの中身を確認した。
とりあえず、全部無事。
良かったと胸を撫で下ろしながら立とうとするけれど、足元が砂と言う事もあってか…中々力が入らなくて。
キーラに手伝って貰って貰う事数分。
「やっぱり何もなしで歩くのは辛いかな…。」
ようやく立ち上がったはいいが、体力の衰えを隠せず、ポツリと呟く。
それに、ここからは何段も階段を上り下りする上に、かなりの距離を歩かなければいけないだろう。
街に着くまでに持てばいいが。
一方、僕の焦りなど知る由もないキーラは、早く何かを食べたくて仕方がないらしい。
早々にトランクケースに忍び込ませてあったパンをひとかじりして、腹を満たしている。
――全くもう…人の気も知らないで。
僕はむしゃむしゃとパンに噛り付く彼女に手を伸ばし、白銀の長い髪を優しくリボンで結うと、淡い青色のヴェールで美しい髪を覆い隠した。
キーラは手を止め「どうして?」と言わんばかりに僕を見上げるけれど、理由は簡単。
「その髪は綺麗だし、とても好きだけれど…この国の人は見慣れていないかもしれない。驚かせたくないし、今、目立つのは正直避けたい。だから、今はこうしておいて。」