ALONES
――偏見、差別、迫害。
人とは身勝手な生き物だ。
大多数の者と違うモノを持つ者に対して、恐怖を抱く。
恐怖は募ればやがて見えぬ鎌となり、異端と貶め、狩り落とす。
イゼリオ公国の者が、極彩人と呼ばれているのも、一種の哀しい差別なのだろう。
今でこそ同盟を組み、友好条約を結んでいるが…少し前までは酷い有様だったらしい。
かつて彼女の仲間を…人魚を身勝手に狩ったように、人間同士の醜い争いが続いていたのだ。
だから。
彼女だけは、絶対に奪わせない。
きゅっと、キーラを引き寄せ、手を繋ぐ。
思わず力を込めたその手に驚いて、キーラが僕を見上げている事に気が付いたけれど、
あえて何も言わず、静かに砂浜を後にした。
トランクケースを下ろして、息を吐く。
この目の前にある小さな木々を抜ければ、美しい都が―――。
と、そんな展開を期待していたキーラにとっては、予想外の結果となってしまった。