ALONES
流石のキーラも、僕と同じ状態のようだ。
呆然と彼を見つめる彼女の頭の上には「?」マークが数十個浮かんでいるに違いない。
にも関わらず、店主はお構いなしに僕たちをぐいぐいと店内へ押し込み、こちらをジッと見ながらも食事を堪能している客たちを押しのけ、最奥のカウンターへと招いた。
「よし、最初の一品目はレディーファーストで彼女から。」
汚れた食器の後始末を終えた店主は、カウンターに戻りニヤリと笑う。
キーラは「本当に!?」と目を輝かせ、沢山あるメニューから―はいいが、文字が読めない為―適当に指をさして注文を始める。
兎にも角にも、リンゴ酒の独特な匂いが漂う店内で、僕たちは料理をタダでご馳走されることになってしまっようだ。
ここまで来て断る事も出来ず、僕は座り心地の悪い木製の丸椅子に座り直して、手に顔を埋めるように頬杖を付き、その光景を眺める。
面倒なことにならなきゃいいけど。
嬉しそうなキーラを横目にため息を吐くが、まぁ結果オーライと言った所か。
なんだかんだで僕自身も料理を頂く事となり、
昼食は、ほぼ僕と彼との会話で進んでいった。