ALONES
そして、話は今に戻る訳だが。
「それにしてもよくここまで来れたな。」
無精ひげを触りながら、ティベリオは言う。
「まずオルフィリアから来た事に関しても驚きだしよ、スラム街をすんなり通ってきちまうなんてなぁ。」
彼が言うには、どうやら“かの出来事”のせいで、オルフィリア、ロレンツェ間の行き来がかなり困難になり、厳しくなっているのだという。
それをよくパスポートも無しに…と彼は言いたそうにしていたが、こちらにも言えない事情がある訳で。
「大通りは通ってないんだ。少し、訳があって。」
そう言えば、疑いはしていないものの、彼は鼻の下を伸ばして数度頷く。
「まぁ、人には色んな事情があるってもんよ。」
若干僕に鎌をかけているように聞こえるのは、気のせいだろうか。
少し警戒心を強めるが、ティベリオは続ける。
「どうせ、王宮や都市、観光名所から遠く離れた場所に住んでる奴らは皆何かしらを抱えてんだ。
でもこの街は、まだ“先生”がいるからマシな方だぜ。」
――先生?
ふと、気になる単語が飛び出た。
「先生って?」
思わず聞き返すと彼は口を開き「ああ、先生はな、」と顎に浮いた無精ひげを触る。
「先生ってのはさっきも言った“教会のシスター”の事だよ。子どもたちが先生先生言うもんだから、ついつい俺たち大人も、な。」