ALONES
むしろ、この世に留まってしまった事を嘆き、悲しみに満ち溢れているように見えた。
「…死ねないのよ、私。」
彼女は儚げに笑う。
「傷は数日も経てば治ってしまうし、血も底なしに増えるわ。あらゆる手段で死のうとしても…私は自分自身の命を自分自身で終わらせる事もできないの。」
皮肉気に、彼女は僕を見た。
その瞳はあまりにも深すぎて、まるで海のように底がない。
整った顔、薄い唇。
この世の物とは思えぬ幻想的な姿に、どう抗っても目が釘付けになる。
「ねぇ、もう私が人魚だって事…知ってるんでしょう?…私を見て、なんとも思わないの?」
彼女は僕を見たまま、ふいにそう言った。
そして上半身を起こせば、肩からはらはらと白く長い髪が零れ、ふくらみのある胸が露わになる。
わ、わ。
慌てて目を逸らすけれど、彼女がジッと僕を見ているのを感じて。
とはいえ、裸の彼女をここまで連れてきたのは僕だ。
何を今更、と思ったが、やっぱりダメだった。
「…素直に、綺麗だと思います。」
顔を逸らしたままそう言えば、突然、カラカラと彼女が笑い声を上げた。