ALONES
彼曰く、あの教会が街唯一の教育機関で、貧しく数少ない子どもたちが、シスターの下、無償で勉学を学んでいるらしい。
オルフィリアにも同様にそのような機関は存在し、
中・下流階級の子どもたちは付近の教会で最低限の教養を学び、
騎士を目指す者や上流階級の子どもたちは、城で騎士道と貴族としての教養を学ぶのが主流となっている。
「教会のシスターさんは偉大な方なんだね。」
僕の一言に、ティベリオはまるで自分の事のように頭をかいて照れくさそうに笑う。
「ああ、本当にいい人だよ。あの人は。」
けれどほんの一瞬、彼の表情が少しだけ切なく揺らいだような気がした。
――それから暫くして彼にお礼を言い、僕たちは教会に向かう事に。
近くに質屋がある事を確認し、先にそこへ行くべく踵を帰す。
帰り際、僕のぎこちない歩き方を見て悟ったのか、ティベリオは一本の杖を貸してくれた。
「客の忘れもんだけどよ、ずっと取りに来ないから…まぁ、ジジ臭いが無いよりはましだろう。」
彼の言うとおり、確かにデザインは色々と難ありだが、役目は果たしてくれそうだ。
「また返しに来るよ、ありがとう。」
店を後に言い残し、キーラの手を取る。
「眠い?」
「眠くないけど…頭がガンガンするわ…。あの飲み物は頭痛になるのね。」
唸り、僕に縋るように息を吐く彼女に、ただ苦笑いを返す事しかできない。
頭痛になる飲み物は無いよとも思ったが、今のキーラに何を言っても唸るばかりだろう。