ALONES

そのままの足で先に質屋に向かった僕は、適量の宝石や装飾品を売り、換金する。

質屋のお爺さんは鑑定しながら、僕たちを終始黙って見ていたが…
何をされるわけでもなく無事に換金を済ませ、貨幣と紙幣が入った袋をトランクに押し込んだ。

そして再び露店が畳まれた石畳の道を、教会目指して歩き出す。


道中、キーラが呟く。



「……ティベリオ、彼はいい人だったわね。ああいう人間なら好きよ。」



太陽は着実に西に傾き始め、街全体が炎に焼かれているかのように夕日が街を赤く染め上げる。
同じように頬を赤く染めたキーラはまた眠り出しそうだ。


「教会に行ったら宿を探そう。できれば一階に客室があるところがいいな。」



冷たい風が吹き始め、逃げるようにして僕らは足を速める。

僕の黒いケープに包まり震えるキーラを、片手で抱きしめながら歩く事数分。


木製の大扉の両側に、可愛らしい花の咲く鉢が置かれたごくごく普通で質素な造りの教会に着いた。

白い外壁は所々塗装がはげ落ち、頭上で小刻みに揺れる鐘は若干錆びついてはいるけれど、ティベリオの言う事が正しければ、ここには素敵なシスターがいるはずだ。


…シスターに会って、早くパスポートを発行して貰おう。

そして早く宿に泊まって休もう。



疲れた体に鞭を打ち、扉を一気に押す。




すると、ふわりといい香りが僕らを包み、外見同様質素な屋内が僕らの視界に飛び込んだ。


白い外壁に沿って骨組まれた、木目がむき出しの柱、柱の間に割って入る様に並べられた年季の入った長椅子。

そして突き当りには主祭壇があり、そこに祀られているのは城の礼拝堂に飾られている白い羽の女神像ではなく、黒い羽の女神像。


この教会の造りと言い、装飾と言い…恐らくここは破壊の女神信仰の教会なのだろう。



僕はぐるりと教会を見渡し誰かいないか確認するが、どうやら誰もいないらしい。

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