ALONES
奥の部屋にシスターはいるのだろうか。
ひとまず荷物を長椅子に置いて、今にも眠ってしまいそうなキーラを椅子に座らせる。
呼びに行こうか…いや、でも…。
そんな葛藤を暫く繰り返していると、ギィと扉が開く音がして…黒い修道服に黒のベールをかぶった一人の女性が現れた。
「――如何なさいました?」
燭台を片手に歩み寄ってくる彼女こそ、例のシスターなのだろう。
早速、事情を説明しようと僕が口を開けかけるが…
不意に彼女の表情が変わった事に気が付いた。
丁度お互いの顔がよく見える距離、と言った所か。
明らかに彼女は僕の顔を見て驚いている様子で、じっと立ちすくみ、燭台を持つ手は震え、炎も一緒に揺らめいている。
一体、何がどうしたというのだろう。
思わず「大丈夫ですか、」と声をかけ手を伸ばす———が、
「触らないで!」
突然、発された声が教会に響き渡り、伸ばした手がビクリと慄く。
半分眠りに落ちていたキーラも今の怒号で目を覚ましたのか、何事?と顔を上げた。
—訳が分からない。
何故彼女がこんなにも僕に怯え、怒っているのか。
この人と会うのは今日が初めてのはずだ。
さらに付け加えるなら、僕は5年間も孤島に隔離され、一度もこの国には訪れていない。
接点がまるでない。
それなのに。