ALONES
——と、そう言われても。
パスポートの発行をしてもらわないと、安心して宿にも泊まれない訳で。
「お引き取り…できませ、ん。」
扉に張り付いたままそう答える事しかできない僕に、キーラが駆け寄り、
「アルに何するのよ!」
と、乱暴にシスターの肩を押す。
すると、ふらりとよろけた彼女の眉間にぐぐっと皺が寄った。
「……アル?何を言っているの貴女。この方は正真正銘、」
だが、その時だった。
バンと右隣の扉が大きく開き、見覚えのある男がこちらを向いた。
黒いバンダナを頭に巻き、その下からぎょろりと覗く目が僕たちを捉える。
…ティベリオだ。
まさか今日もう一度会うとは思っていなかった彼は、ふぅ、と息を吐くとやれやれと言った感じに呟いた。
「やっぱり間違えたか。」
そして僕らを通り抜け彼はシスターの元に歩み寄ると、その手から燭台を取り上げて、言った。
「シスターさんよ、アルヴァスティンは、“あの人”じゃないぜ。」
“あの人”が誰かは分からないが、やはり彼女は人違いをしていたようだ。
ティベリオに言われ僕の顔をもう一度見に来たシスターは、ハッと息を飲みただただ申し訳なさそうに項垂れ…深く、それはもう深く僕に頭を下げた。
「本当に、ごめんなさい…!」
人違いだとはいえ、散々だなと思いつつも…彼女自身に悪気はないわけで。