ALONES
刹那、ほんのわずがではあるが、ランベールの眉がピクリと動いた。
「悪いが、俺はあんた等の馴れ合いごっこに参加するつもりは無い。結局は同盟と言えど、ただお互いを侵略しないで下さいねと安っぽい防衛線を張ってるだけに過ぎないのだろう。」
隣で今だに剣を抜いたまま、唸っているアストリッドに剣を戻すよう促し…俺はその黒く揺らめく瞳を見据える。
「それに、戦争は不利益ばかりではない。この意味を、あんたなら分かっているはずだ。」
「………。」
「こちらに宣戦布告をするなら勝手にするといい。だが俺は俺のやり方で、この国を築く。俺の邪魔をする奴は…誰であろうと容赦はしない。」
一呼吸。
互いを伺う様に、黙る。
が、すぐにランベールが沈黙を破り、ふ、と笑うと首を振った。
「左様。ならばご自由に。私は当面の間、王宮と城を交互に巡視させて頂きますので、それをどうぞお忘れなきよう。」
…いつもお前を見張っているから覚悟しておけよ、と言う事か。
遠まわしに人を脅すのがうまい奴だと感心する。
「――ただ。」
そんな彼は踵を返す前に、口を開く。
「私も騎士として、主の邪魔をする輩は誰であろうと容赦は致しません。」
目を細め一礼し…立ち去るその姿に、思わず微笑が込み上げた。
「言ってくれるな、ランベール。」
とことん自信過剰な男だ。
だが、笑っていられるのも今の内。
「いつか地獄を見せてやる。」
お前など“想定内”に過ぎないのだから。