ALONES
だが彼はすぐにニコリと笑い、彼女を見る。
「でも、きっとそこがレイチェルさんの魅力だと思いますよ。なんつっても美人だし。ここだけの話、オレのカミさんより綺麗だと思う。」
暖炉で揺らめく炎に視線を戻し、何事もなかったようにずずっと湯を飲むキールを、レイチェルは唖然として見つめた。
「…お前、結婚してるのか。」
「え?」
「今『オレのカミさん』と言っただろう。」
ポチパチと、炭化した木が跳ね上がる。
暫くの沈黙の末、キールはヘラっと首を傾げ、「そこ?」と笑い始めた。
どうにもこうにも自分の問いが的外れだったようだ。
くっくっくと何度も腹を抱える彼を見ていると、段々腹立たしくなってきて。
「もういい!」
レイチェルはいてもたってもいられなくなり、両腕にさらに深く顔を埋めた。
何度も笑いながら謝った所で、説得力などアリやしない。
それでもキールは目尻に溜まった涙をふき取ると、右膝を抱えてチラリと視線を送った。
「オレ、こう見えて3児の父ですよ。男女男の三兄弟の。」
途端、胃の中身が飛び出そうになり、レイチェルは盛大にむせ返る。
3児の父、だと!?
思わず彼の容姿を二度見して、口を押えた。