ALONES


「———な、」


振り返った途端、心臓が止まりそうになったのは言うまでもない。

湯を噴き出すキール、レイチェルもまた、弾かれた玉のように飛び上がった。


それもそうだ。


自分たちに声をかけてきた人物。


それはまさに一国の王にして我が主。

オルフィリア国王、その人だったからだ。



「陛下、!?」


慌てて胸に手を当て、一礼を捧げるレイチェルとキール。


何故、王がこんな所に?


王が身に着けている毛皮の羽織が揺れるように、レイチェルたちも動揺を隠せない。


しかし、


「そんなに堅くならずともよい。いやはや、どうにもこうにも一人で籠っていると気が滅入ってしまってな。話し声が聞こえたものだから、来てしまった。」


ふおっふおっふおっ。

悪意など微塵も感じさせない笑顔で微笑む王。


無論、レイチェルとキールは互いに顔を見合わせ、ただ固まる事しかできない。


——自分たちにどうしろと言うのだ。


少なからず考えている事は同じだろう。


だが王は、まぁ座れと言わんばかりにレイチェルの肩を優しく叩き、自らも傍らの古びた椅子に座る。

嗚呼、そんな椅子に座っては折角の威厳が。

レイチェルはポツリと湧いてきたそんな感情を飲み込み、王に触れられた肩から一つずつ関節を折るようにして―ぎこちなく、床の上で足を畳んだ。

勿論キールもそれに習うわけで。


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