ALONES
この期に及んで気が付いた。
私自身が臆病だったのだと。
越えられるものがあると言う事を、王が教えてくれた。
だから私は彼の為に命を懸ける。
それだけの価値を、彼が私に与えてくれた。
私に騎士以上の価値を与えてくれたのは、紛れもない彼だ。
最後に父が感じた思いなど知る由もなく、レイチェルは微笑んだ。
これ程までに楽しいひと時があっていいのかと、心苦しくもあった。
「ここがあのシファの戦いの時に付いた傷らしいんスよー。」
「ほう…成る程。」
「ん、待て、まさかこれ本物…?」
「あったりまえじゃないスか、勿論ウィルフレッドが使ってた弓ですよ。」
されどそんなひと時の中でも、レイチェルは決して…忘れていなかった。
この先の旅路でジークハルト・ラ・ヴァルニエが死んだことを、
レイチェルは忘れていなかった。