ALONES
「…おい、あんた、なにやってんだ。」
二つのソファーの間に据えられた木製の机に足をかけ、男が眠るソファーめがけて一気に押す。
ズッと鈍い音を立て移動する机の側面が丁度男の顔面にぶち当たり、ヨアはくくっと笑い声を漏らした。
突然の出来事に目を覚ました男は、鼻を押さえて悶える。
鼻が折れた、折れたぞ絶対。
涙目になりながらも体を反転させれば…不敵な笑みを零しながら足を組み腰かけるヨアの姿があって。
男…ランベール・フォルジュは今だソファーの上に寝そべったまま、ヨアを睨みつけた。
「お前…俺は仮にも上司だぞ…このアホ。」
「馬鹿ですか、自業自得です。」
「馬鹿とは何だ馬鹿とは…お前のせいで俺の鼻が機能しなくなったらどうする。」
「大好きなレイチェルの匂いが嗅げなくなりますね、残念。」
「……殺すぞ。」
大袈裟だなとわざとらしく肩をすくめ、ヨアは頬杖をつく。
「大体、何故私の部屋で寝てるんですか。自分の部屋で寝ればいいでしょうに。」
だが、ランベールはこれでもかと言う程長いため息を吐き、首を振った。
「王宮の俺の部屋がどこにあるか知っているだろ。」
呆れたように呟くなり彼は右腕を額の上に乗せ、目を閉じる。
言いはしないが大層疲れているに違いない。
「あんな場所で寝るなんて、気が気じゃない。」
ヨアは王宮での彼の部屋がアストリッドの部屋と隣同士だったことを思いだし、成る程と心の中で呟いた。