ALONES


途端、大袈裟に起き上がったランベールはまるで幽霊でも見るかのように、ヨアを凝視した。

それから、苦虫を噛み潰したかのような表情で笑みを浮かべる。



「お前…どうした…。もしかして、俺の事好きなのか。」


—―唖然とし、愕然とした。


「…ハァ?」


ヨアは引き攣り気味の笑顔を浮かべたまま、もはや衝動的に、腰に下げられた短剣をランベールの頭めがけて勢いよく投げつけた。

ザクッと物騒な音を立ててソファーの背もたれに突き刺さるソレ。


「危ないな!」


間一髪避けたランベールは立ち上がり怒鳴るが、ヨアの怒りは治まらない。

次から次へと投げられる短剣がランベールを追いかけ、その精悍な顔立ちから想像もつかないような罵声が飛ぶ。


「つくづく人の善意を踏みにじるのが得意な奴だなあんたは!だから、レイチェルにも好かれないんだよこの変態!」


「お、お前がらしく無い事を言うからだろう!それと、さっきも言ったが俺は上司だぞ!なんだその口のきき方、うおぁっ」


「うっせーんだよ!いつもヘラヘラしやがって、あんたの身を案じて心配してやってるこっちが馬鹿みてぇだろーが!」


「あー!わ、分かった分かった!だからもう止めよう、な?」


「な?…じゃねぇ!」



ガゴン!


凄まじい音を立てて、ランベールが隠れた机に8本目の短剣が突き刺さった。


少々感情的になりすぎたかと、短い反省を終え…ヨアは肩を上下に揺らしながら息を吐く。

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