ALONES
キーラは、昨日とはまるで別人の様だった。
表情豊かで、声もハキハキしているし、人魚のくせに二本足で軽やかに歩き、僕の家のあちこちを見て回る。
「人魚って、歩けるんだね。」
そう呟けば、彼女は少し濡れた僕の髪の毛をタオルで乾かしながら、
「人魚は特別な存在なのよ。」
だなんて言って笑う。
彼女は僕と違って明るい性格なのだろう。
今の彼女を見ている限り、昨日彷彿とさせた死など、遠い存在に思えるくらいだ。
僕の髪を乾かし終えたキーラは、ひとしきり家の中を見て回ると、何やら箱の様なモノを持って帰って来て満足げに口を開く。
「アル、あなたの家は宝の山だわ。」
「…は?」
とんちんかんだった。
宝の山だなんて…何を言っているのだろう。
僕の家は殆ど何も置いていないし、使っていない二階や、あちこちにある子部屋なんて埃まみれに違いない。
それなのに、どこで手に入れて来たのか…。
彼女はプレゼントボックスに似た箱を机の上に置くと、自慢げにその蓋を開けた。