ALONES
キーラはその後もずっと家の中にいて…話したりしている内に、気が付けばあっという間に夜になってしまった。
「わ、もう夜なのね。」
暗くなった窓の外を見て、大きく伸びをするキーラ。
僕は紅茶を一飲みして、息を吐いた。
「今日は楽しかったわ。…私、久しぶりに生きてるって感じた。あなたのおかげよ。」
もうじき帰るつもりなのだろう。彼女は椅子から立ち上がり、にこりと微笑む。
「…僕もだよ。君を見つけなければ、僕は昨日死んでいたからね。」
素直に、そう思った。
今日一日、孤島に来てから初めて、他の人と過ごした一日だった。
退屈するわけでもなく、寂しさを感じることもなく。
僕の心はとても温かかった。
するとふいにキーラが僕の首を見て、「あ、そうだったわ。」と声を上げた。
「私、薬を持ってきたのよ。」
そう言うなり彼女は服のポケットから何やら小瓶を取り出し、中に入っていた薄桃色の液体を指に付け、
「ちょっと沁(し)みるかも。」
と、短く前置きをし、その液体を僕の首の傷に塗り込んだ。
じゅわっと、一瞬の冷たさとじくじくした痛みが走り、僕は小さく声を上げる。
「これ、何の薬、」
問いかければ、キーラは平然と言う。
「薬草と、私の血が練り込んである傷薬よ。」