ALONES
キーラは潤んだ大きな瞳を僕に向けた。
「…アルの家で目覚めた時、本当はあなたを殺そうと思ったのよ。」
綺麗な髪が靡いて、彼女は目を伏せる。
「でも…あなたは泣いているし、傷も丁寧に手当されてたし…何より、あなたの首にあった深い切り傷を見て、心がすくんだわ。」
それからもう一度僕を見上げると、手を取り口元を緩めた。
「—―今でも人間は憎い。…けれど、傷ついた私を、心が荒んだ私を、たった独りの人魚を…あなたは綺麗だと言ってくれた。死ぬのは勿体ないと言ってくれた。―アル、あなたは他の人間とは違う。あなたは…私を海の底から引き上げてくれたのよ。」
ありがとう、と、彼女は微笑み、そして、
「もう、死にたいだなんて決して言わないわ。」
僕の頬に小さく口づけを落とす。
ぽんっとその場で花が咲いたように僕の顔は紅色に染まり、彼女を取り巻く景色は今まで以上に鮮やかになって。
こんな気持ちは初めてだった。