ALONES
—―二日前。
「…オルフィリアの、第一王子なんだ。」
アルは優しい琥珀色の瞳を伏せた。
それから彼を蝕む不治の病の事も、その病のせいでこの孤島で暮らしていることも、
彼は赤裸々に、私に話してくれた。
「別に、父や母を恨んでいる訳じゃない。」
ただ、この体が死に往くのを感じる度に、生きていくのが辛くなるだけ———。
アルは故郷の見える灯台の上で、眉を下げ、微笑み、故郷を見る。
その姿は、とても寂しそうだった。
でもそれでいて、王子としての品格か、威厳も残っているようでに思えて。
本来ならば大国の頂点に立ち、皆を従え、悠々とその人生を全うしていくはずだった人が、
突然襲った病魔のせいでこんな孤島に独り暮らし、死を望み、涙を流し、苦しんでいる。
なぜ、運命はこんな試練を与えるのだろう。
なぜ、こんな目に合わなければいけないのだろう。
白の貴族服を纏った彼が私の目の前を通り過ぎ、消えてゆく。
私はただ、彼の両手を優しく握る事しかできなかった。