ALONES
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昼に近くなって、ようやく誤解やら早とちりやらで騒がしかった家は落ち着きを取り戻し…
相変わらずのキーラは笑うばかりだったが、急に何かを思いついたように、
「私、ちょっと出かけてくる。」
と言い残して、家を出て行ったのが大体5分前くらい。
彼女がいない家で、異例の訪問者と二人きり。
紅茶を一口飲んで、小さく息を零すと…目の前に座る懐かしい女騎士を見た。
「君が来てくれるだなんて…思ってもいなかったよ、レイチェル。」
2週間に一度の配給。
いつもはそこら辺の傭兵しか来なかったのに、今日はどうしたことだろう。
「私も、再び殿下にお会いできるとは…夢のようです。」
レイチェルは、昔と変わらぬ笑みを零したが、その仕草は完全に大人の女性として、専属騎士としての品格が定着している。
けれど昔からあった頬のそばかすはそのままだし、切りそろえられた赤髪と髪型も変わっていない。
別れてから、5年の歳月が経っている。
変わらないものも、変わったものもあるだろう。
僕より1つ年上の彼女だが、僕の専属騎士をしている頃は…僕を守るどころか、いつも他の男たちにからかわれて泣いていたし、
剣術もなかなか上達しなくて…晩まで練習に付き合ってあげていたのを思い出す。
けれど今は…きっと凄腕の騎士になったのだろう。
父の第二専属騎士だなんて、そうそうなれないものだし…ましてや彼女は女だ。
男との体力差という壁があるにも関わらず、本当に凄い。
そんなレイチェルは金色の瞳を数回瞬かせ、あ、と何か思い出したように僕を見ると、
懐から何やら白い封筒を取り出した。