ALONES
大国オルフィリア王国と、小さき隣国、ロレンツェ公国。
かつてからこの二国は他の同盟国よりも、かなり強い結束で結ばれた同盟国であった。
レイチェルの話によれば、近日中にオルフィリアとロレンツェ間で会合が行われ、同盟をより強固なものにし、また、世界的地位の向上を図る為、二国の合併を行い…新たな国が建国される予定であった。
それに伴いオルフィリアの次期国王と、ロレンツェの姫が俗に言う政略結婚をする――という所まで順調に決まっていたらしいのだが。
あろうことか、突然ロレンツェの姫が結婚を拒否し、国へ帰ってしまったそうで。
その事に激怒した次期国王が、ロレンツェ公国に対し戦争を仕掛けようとしている…と、彼女は話した。
「エルヴィス様は変わられました。昔は…あんな風ではなかったのに。」
そう項垂れて、目を伏せるレイチェル。
エルヴィス・フォン・オルフィリア…。
次期国王であり、僕の弟でもある彼。
エルヴィスとはもう数年も会っていないのだから、彼女が項垂れても、どう変わってしまったのか僕には分からない。
けれど話を聞く分には、昔と想像もつかないくらいに変わってしまったようだ。
「いつも僕の背中や物陰に隠れていた、あのエルヴィスが?」
実感の湧かない僕が言えば、レイチェルは首を振りそれを否定する。
「エルヴィス様はかなり好戦的になられました。口調や仕草もどこか闇を孕んでいて、皆、エルヴィス様を恐れ…服従している。正直、あの方が国王になったらと思うと…怖くて仕方がありません。」