ALONES

十数メートル下の海を見つめていた僕の目が、ふいに手前の岩礁をとらえた。


「…、」


なんだあれは。


それは貝殻のように白い鱗だった。

珊瑚のように白い髪だった。

魚のような下半身の尖端には、大きな鰭(ヒレ)が付いていた。



そして、その白い肌から伸びる腕からは、真紅のリボンが零れ落ちていた。




…なんだあれは。



僕は首に押し当てたフルーツナイフを力なく下ろし、岸壁を覗き込む。


岩礁の上に倒れる、人、のようだった。

けれど、足があるであろう部分に、足は無く…代わりに魚の尾鰭が付いている。

まさにそんな感じの。



と思った瞬間、僕はハッとした。


あれ、あれ、あれってもしかして。


気が付けば、切れた首の皮膚が血で滲んでいることも厭わずに、僕は再び上手く動かなくなった足で、岸壁の下の岩礁を目指していた。


なんだか無性にドキドキして、濁った瞳が潤っていくような気がした。

< 6 / 185 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop