ALONES
十数メートル下の海を見つめていた僕の目が、ふいに手前の岩礁をとらえた。
「…、」
なんだあれは。
それは貝殻のように白い鱗だった。
珊瑚のように白い髪だった。
魚のような下半身の尖端には、大きな鰭(ヒレ)が付いていた。
そして、その白い肌から伸びる腕からは、真紅のリボンが零れ落ちていた。
…なんだあれは。
僕は首に押し当てたフルーツナイフを力なく下ろし、岸壁を覗き込む。
岩礁の上に倒れる、人、のようだった。
けれど、足があるであろう部分に、足は無く…代わりに魚の尾鰭が付いている。
まさにそんな感じの。
と思った瞬間、僕はハッとした。
あれ、あれ、あれってもしかして。
気が付けば、切れた首の皮膚が血で滲んでいることも厭わずに、僕は再び上手く動かなくなった足で、岸壁の下の岩礁を目指していた。
なんだか無性にドキドキして、濁った瞳が潤っていくような気がした。