ALONES
レイチェルは穏やかに、そして爽やかに微笑んだ。
「必ず、また…お会いしましょう。」
「…ああ、必ず。」
懐かしき女騎士は胸に手を当て、丁寧に一礼をすると…
海の向こう、波乱と混沌のオルフィリア王国へと強かに帰ってゆく。
その姿を記憶に焼き付け…立ち尽くす事数十分。
夜が迫り、冷たい風が吹き始めた頃…キーラが何やら大きな荷物を抱えて帰ってきた。
「あら、彼女、もう帰ってしまったの?」
キーラは他人事のように呟いて、遠慮なく家の中に入っていく。
だが、すぐにもう一度外に出てくると、僕の手を握り、口を尖らせ言った。
「何やってるのよ。…風邪引いちゃうわよ。」
ぶっきらぼうな優しさが、凍えていた僕の心を温めて。
ふふ、と笑えば、キーラは、
「やだ、何その笑い方。」
と僕を貶す。
でも、変なのと笑う。
笑って下さいと、レイチェルが言った。
今はまだ上手く笑えなくても、いつかきっと、上手く笑えるから。