ALONES
「世界中には手で料理を食べるのが普通っていう国がいくつかあるけれど、ここは違うからね。」
「はいはい、分かった分かった。」
聞いているのか聞いていないのか、キーラは適当に返事をしてガツガツと焼き魚を頬張る。
「美味しい。」
そう呟く彼女の口の周りには白身がいっぱいついていたけれど…もう、いいや。
いちいち言うのも、なんだか悪いし。
すると、キーラは不意に碧い瞳を僕に向け口を開く。
「それ、あの女の人が置いて行ったの?」
目線を変えた先にあったのは、大量の国報紙。
余程気になるのか…キーラはジッとそれを見つめて目を離さない。
「そうだよ、読む?」
「ん、いいわ。私、人間の文字読めないし。」
…そういう割にはまだ見ている。
たが、彼女は文字を読んでいる訳ではなかった。
「オルフィリアの国内情勢が書かれているのね…。読めないけれど、その絵でなんとなく分かるわ。」
おもむろに記事の一角にある絵を指す。
そこには剣を交えて戦う、甲冑を纏った人物の風刺画が描かれていた。
「“戦争勃発か?”…きっとオルフィリアとロレンツェの事だね。」
記事の文字を読み、呟けば、え、と声を上げる彼女。
国に詳しいせいか、かなり驚いた様子で記事を覗き込む。
「…オルフィリアとロレンツェは戦争を始めるの?」