ALONES
これはダメだ。
咳きこみそうになるのを我慢して、手探りで銀のコップをを掴むと、甕にそのまま突っ込む。
それから乱暴に水を汲み、口の中の粉と一緒に飲み込めば…詰まっていた息が喉から溢れ出した。
「アル、大丈夫?」
駆け寄り、暖炉脇にある棚に手を付いた僕の背をキーラが撫でてくれる。
涙目になりながら、大丈夫だよと呟くと…何故だか彼女は一層悲しそうな顔をして。
「この薬は…あなたの病を治せるの?」
ふ、と机に散らばった薬に目をやった。
「…ん、分からないけど…イゼリオ公国の医師団が開発した新薬だって…」
「…そう。」
キーラはそう呟いて僕の元を離れるとベッドに戻り…窓の外を見る。
そんな彼女を見て、ふと思ってしまった。
でもこんな事を聞くつもりは無かった。
以前も、これからも。
けれど…僕の心は、欲を隠せなくて。
「キーラ。」
そう呼べば、うん?とこちらを向く彼女。
言いかけて、止めようと。
でも、聞きたい…どうすれば。
ほんの少しの葛藤、ほんの数秒の自制心。
「君の血では…」
止めろ、止めてくれ。
こんな事を聞いて彼女に嫌われでもしたら――
「僕の病を治す事はできないの。」
心を覆い隠しても、その声は止まらなかった。
負けた。僕は、欲に負けたんだ。