ALONES
第2章

女騎士の帰還




――グランフィリア城、城裏。

半屋内にある小さな波止場に着いた時にはもう、宵闇が背中の後ろまで迫っていた。


…夜か。


木製の小舟から降り、ロープでしっかりとその船体を流されぬように繋ぎ止める。

途中、じゃぶりと音を立てて波が階段まで打ち寄せてきた。

そのせいで固まった海水が跳ね上がり、冷たい海水が服の袖を濡らす。



「ひゃ、」



妙に可愛らしい声が出た。

自分でもぞっとするような羞恥心に苛まれながらも、赤髪の女騎士―レイチェルは下りれば水底へと続く階段を数段上り、平らな通路の突き当りに鎮座する、金属製の扉に手をかける。


ぐっと引けば扉はギィと特有の音を立て不気味さが増すが、彼女はそんな事お構いなしに、壁にかけてあったランプに火を付け、上へと続く暗く狭い階段を上り始めた。


埃とカビの匂いが、鼻を付く。


螺旋状に続く階段はやたら寒く冷たく、人がよく使用している―という感じは全くしない。

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