ALONES

それもそうだろう。


本来ならばここは罪人に下された流刑を執行するために使われる場所だからだ。


そして今はもう長い事使われていない。


5年前、オルフィリア王国第一王子、アルヴァスティン・フォン・オルフィリアを孤島シトルイユに送る為に使われた。




それが最後の消された記録だから。





そんな王子と離れて5年の歳月が経ち、

心の奥底に、彼の存在を閉じ込めてしまおうとしていたレイチェルだったが、


突然にして唐突。

彼女に国王直々の命が下ったのは、今朝の事だった。





『アルヴァスティンの様子を見てきてはくれないか―。』




正直、何を今更と思わずにはいられなかった。


5年もの間一切その口から彼の名を呼ぶ事無く、国の歴史に書かれた彼の記録を全て消し去るよう自分に命じ、国民達には、

“王子は各国の文化と伝統を学ぶために多国留学をする事になった。”

だとかほらを吹いて、

その4年後には、

“帰国する道中に何者かに襲われ、その尊き命を落とした。”


と早々に葬儀を執り行ない、エルヴィス様を次期国王として公表した、そのくせに。


何を今更。


レイチェルは、胃が裏返るような不快感に襲われた。

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