ALONES
『葬儀を執り行った今、もう孤島にいる必要などないのだ。王子でありながら、王子には戻れぬアルヴァスティンを…あの孤島から解き放ってやりたい。』
――なんと身勝手な父親だ。
王はそう言わんばかりに、レイチェルに背を向けた。
大きなガラス窓から差し込む光が、彼を照らし、自責と言う重い影を残す。
そうだ。なんと、身勝手な父親だ。
アルヴァスティン・フォン・オルフィリアという人物を歴史から抹消し、まだ孤島で生きている彼を、その名ごと空の棺に入れ、戻れぬ故郷の土の中に葬った。
何を今更。
その疑問の答えに相応する、解が分かった気がした。
“全ての準備は整った。これで国は安泰だ。だからもう用無しの第一王子は平民として、そこら辺に捨てておけ。”
その為に、自分に孤島に行けと命じたのか。
この、腐れ外道。
なんと、身勝手な父親か。
――そう解釈すれば、少しは今までの心の鬱憤が晴れるだろうと思った。
でも違った。
この人は、王は、そんな風に殿下を思っていない。
ただ純粋に、残酷な運命を背負ってきた我が子を愛し、嘆き、自らの決断でより惨い人生を強いてしまったことを悔んでいる。
『…孤島に行ってくれないかレイチェル。』