ALONES


『葬儀を執り行った今、もう孤島にいる必要などないのだ。王子でありながら、王子には戻れぬアルヴァスティンを…あの孤島から解き放ってやりたい。』



――なんと身勝手な父親だ。


王はそう言わんばかりに、レイチェルに背を向けた。

大きなガラス窓から差し込む光が、彼を照らし、自責と言う重い影を残す。




そうだ。なんと、身勝手な父親だ。


アルヴァスティン・フォン・オルフィリアという人物を歴史から抹消し、まだ孤島で生きている彼を、その名ごと空の棺に入れ、戻れぬ故郷の土の中に葬った。




何を今更。


その疑問の答えに相応する、解が分かった気がした。




“全ての準備は整った。これで国は安泰だ。だからもう用無しの第一王子は平民として、そこら辺に捨てておけ。”




その為に、自分に孤島に行けと命じたのか。


この、腐れ外道。


なんと、身勝手な父親か。






――そう解釈すれば、少しは今までの心の鬱憤が晴れるだろうと思った。


でも違った。
この人は、王は、そんな風に殿下を思っていない。


ただ純粋に、残酷な運命を背負ってきた我が子を愛し、嘆き、自らの決断でより惨い人生を強いてしまったことを悔んでいる。




『…孤島に行ってくれないかレイチェル。』
< 85 / 185 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop