ALONES
この地下の船着き場へと続く階段は、中庭を取り囲むようにして作られた半屋内の渡り廊下の一角に、ひっそりと入口を構えている。
普段は気にもされない陰気な場所だが、この時間帯は王国騎士団達が礼拝堂にて祈りを捧げるために、人通りが多くなっていた。
そんな事…されど重要な事をすっかり忘れていたレイチェルは、慌てながらも慣れた手つきで、鉄の扉付近に置いておいた甲冑やらマントやらを身に纏い、愛用の剣を二本腰に携える。
ずっしりとした重みが半日ぶりに体全体にのしかかり、少しの違和感を覚えるが、
彼女は王族専属騎士団の証である純白のマントを翻し、何事もなかったように渡り廊下へ躍り出た。
渡り廊下の両側には蝋燭がゆらゆらと揺らめき、中庭から覗く星空はとても美しい。
ここに暫く立っていたいと心底思ったが、いかんせん、早く陛下に報告を済ませねばと足を早める。
渡り廊下の突き当りを曲がればすぐ右隣に礼拝堂があり、多くの王国騎士団達が手を組み祈りを捧げていた。
あちこちに装飾の施された内装と、純白の羽を纏いし女性像―再生の女神像―の頭上で輝くステンドグラス。
全体的に豪華絢爛な内装なのが再生の女神信仰、全体的に質素な内装なのが破壊の女神信仰で、基本的に再生派と破壊派、と呼ばれている。
これらをまとめて女神信仰と言い、この国の国民の殆どがここでいう再生派らしい。
レイチェル自身もそうだが、城にあるこの唯一の礼拝堂も再生派だ。
祈るように流れ、響く聖歌。
なんとも美しいその響きは、己の心を潤してくれるかのように満ち足りている。
少しだけならいいかと、祈りを捧げるために礼拝堂に立ち寄ろうとした、
その時。