ALONES
「お前がわざわざ礼拝堂で祈りを捧げるんなんて、珍しいな。“真紅の聖女”サマ。」
不意に、耳元で甲冑が音を立てた。
続いて視界にふわりと飛び込んだ、自分と同じ白きマント。
この優しくも抑揚の聞いた低い声は、彼しかいない。
「―その呼び方は止めて下さい。ランベール団長。」
呆れたように振り返り、見上げる。するとそこには長い黒髪を一つに結い整えた、精悍な顔立ちの男がニコリと微笑んでいて。
「そうキツイ顔をするなよ。現に騎士団の皆はお前をそう呼び、慕っているんだ。いいじゃないか。」
「何がいいもんですか。私は見世物じゃない。」
またまた、と男ランベール・フォルジュはレイチェルを宥めるが、それがさらに気に食わない。
それに、この男が来たことで…礼拝堂に出入する騎士たちはさらにこちらを見て声を上げる。
ランベール・フォルジュとレイチェル・ラ・ヴァルニエ。
王族専属騎士団にして国王専属騎士の二人にこんな所で会えるなど、他の者にとっては奇跡としか言いようがない。
それ程までに、二人の存在は異例にして特別であった。
ただでさえレイチェルが礼拝堂の前にいるという事だけでも、騎士たちはざわめき、どよめいていたのに。
―全く、とんだ迷惑だ。