ALONES
「――ところで。」
礼拝堂からかなり離れた場所にある階段の手前で、レイチェルは足を止めた。
どうした?と言った感じにランベールは首を傾げるが、何がどうした?だ、とため息が零れる。
「どうして貴方がここにいるんですか?…貴方は常に王の側で警護をしていなければいけないでしょう。」
それは、礼拝堂前で出会った時から思っていた事だった。
基本、一人の主に対し専属騎士が二人いる場合は、第一騎士が専務、第二騎士が雑務と言う様に分けられている。
それなのに、この男は何をしているのか。
勝手にふらふらとそこら辺をうろついているのならば、完全に職務怠慢だ。
しかし、彼は「あー、それか。」と声を上げると、眉間に皺を寄せ肩をすくめた。
「さっきまで、エルヴィス様が居たんだよ。王の部屋に。」
眉がピクリと上がる。
「……エルヴィス様が?」
何の用があって、と低い声で言えば、ランベールも分からないと首を振った。
「ただ、かなり激しい口論をしてたな。俺は王に外で待つように言われたから、詳しくは分からなかったが、多分、あの事件についてだと思う。」