ALONES
あの、事件。
その単語を聞いた瞬間、自ずと唸り声が漏れた。
ロレンツェの姫君と戦争についてか。
口論をしていたと言う事は、かなり切羽詰った内容…?
辺りに人の気配が無いか警戒しながら、レイチェルは口を開く。
「他に、何かありましたか。」
だがランベール自身も、そうたいした情報は得られなかったらしい。
「ただ、相変わらずエルヴィス様は不気味な笑みを浮かべていたよ。勿論アストリッドを引き連れてな。」
ビクリと、体が強張った。
確か、お前は苦手だろう、あの女の事が。
ランベールはそう付け足す。
しかし、レイチェルにとってあの女は、苦手どころか脅威でしかなかった。
アストリッド・シュナイゼン。第二王子専属騎士。エルヴィス様の、駒。
彼女が自分にしてきた嫌がらせは、今でも薔薇の棘のように記憶を突き刺す。
しかし、レイチェルは首を振る。負けてなるものかと、首を振る。
「あの人の事は…どうでもいい。それはともかく、なぜ団長がここにいらっしゃるのか…そろそろ教えて下さい。早く王の所に行かなくては。」
そう告げれば、ああ、そうだったなとランベールは言った。
「お前を迎えに行くように、王に命じられた。」