ALONES


5年前まで、レイチェルは第一王子の専属騎士だった。

幼い時から二人は行動を共にし、城を歩いている時は兄弟にさえ見えるほど…仲が良かった。


きっと彼女もこんな日々がずっと続くのだと信じて疑わなかっただろう。

いつか彼が国王となっても、永遠に慕い、お守りする。


しかし、突然の病魔は、そんな彼女の願いを簡単に打ち砕いた。



『私も殿下と共に行きます。』



そう何度も訴えた彼女の瞳を、今でも忘れる事は出来ない。

まだ幼さが残る彼女には、理解できない事が沢山あっただろう。



『父様も母様もいない私から、どうして殿下を奪うの。もう二度と殿下と会えないなら、死んだほうが百倍幸せ。』



何度も何度もそればかりを自分に訴え、最終的には『私を殺して下さい。』と言われたこともあった。


けれど。


多くの障壁を乗り越えて、彼女はその闇に打ち勝った。


だから、今の彼女がある。



彼の事も、国の事も、疑問を抱きながらも受け入れ、業に従った。


ゆっくりで…とても時間はかかったが、今やこうして国王の信頼を一途に受け、華々しい地位を手に入れた。

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