ALONES


しかし、いざ王子と会った時…彼女は何を思っただろう。


少なからずショックを受けたのではないだろうか。



5年前と、今。


5年と言う歳月は、人すら変えてしまう程の長い時だ。



彼女の涙の理由をもっと知りたかった。けれど、それは叶わない。


その金色の瞳はまだ、自分が介入することを許してはいないから――。






椅子から立ち上がりながら、王はそれ以上何も追求せず、雲に隠れる月を眺めて口を開いた。


「もしもあの子が死んでいたならば、私もここで死のうと思っていたのだ。

だが、アルヴァスティンは生きていたのだな。良かった。本当に良かった。」


生きているか、生きていないか。


生きてさえいれば、またどこかで会えるかもしれない。


もし会えたら、そこで詫びよう、全ての罪と、愚かさを。


王子によく似た王の瞳は、そう語っているかのように煌めく。



「礼を言う、レイチェル。」



優しく差し伸ばされた、手。

レイチェルは手袋を外し、その包容力のある手を握り返す。



「…礼をすべきは私の方です。陛下。」


< 97 / 185 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop