ALONES
しかし、いざ王子と会った時…彼女は何を思っただろう。
少なからずショックを受けたのではないだろうか。
5年前と、今。
5年と言う歳月は、人すら変えてしまう程の長い時だ。
彼女の涙の理由をもっと知りたかった。けれど、それは叶わない。
その金色の瞳はまだ、自分が介入することを許してはいないから――。
椅子から立ち上がりながら、王はそれ以上何も追求せず、雲に隠れる月を眺めて口を開いた。
「もしもあの子が死んでいたならば、私もここで死のうと思っていたのだ。
だが、アルヴァスティンは生きていたのだな。良かった。本当に良かった。」
生きているか、生きていないか。
生きてさえいれば、またどこかで会えるかもしれない。
もし会えたら、そこで詫びよう、全ての罪と、愚かさを。
王子によく似た王の瞳は、そう語っているかのように煌めく。
「礼を言う、レイチェル。」
優しく差し伸ばされた、手。
レイチェルは手袋を外し、その包容力のある手を握り返す。
「…礼をすべきは私の方です。陛下。」