『無明の果て』
「解ってるわよ。

私がそばにいないのは、私のせいだもの。


それに、涼君の事は私に話したくないだろうし…


ねぇ、私の誕生日プレゼント覚えてる?。

半日遅れの温泉。

温泉に行く日に、一行がなかなか帰って来なかった事あったでしょ。
あんな気持ちになっちゃった。

だから私ね、慌てて帰って来たの。


もちろん一行の事は心配だったけど、私、本当は一行の事少し疑って、園さんのとこ行っちゃうかもしれないって…


勝手よね。

自分の事しか考えてない。


アメリカへ行くのも、日本へ帰るのも、みんな自分勝手。」



一行はうなずいただけで、何も答えなかった。




一行が本社出張を終えるまでの二日間を、私達の本当の出発に出来るように、もう一度出来る事をやり直してみよう。



一行は早くから会社へ出向き私も後輩達へ久しぶりのメールを送った。



”鈴木麗子

一時帰国しましたので、昼食はいかがでしょうか?“


”相変わらず、驚かせ上手。“


と、嬉しい返事も返って来た。


時計を見ながら、お昼までのわずかな時間に、会長にもお祝いの電話を入れる事にした。


「もしもし、麗子です。

ご無沙汰しています。」


「おぉ、麗子さん。

アメリカからはいつ?」


「はい。
昨日です。

ご結婚おめでとうございます。」


「一行に聞いたんだ。
わざわざありがとう。
アメリカへ戻る前に、一度飲みたいね。

考えておいてよ。

あっ、ちょっと待って。」



少し時間があいた。



「もしもし」



「えっ、涼君?」
< 108 / 225 >

この作品をシェア

pagetop