『無明の果て』
この時を待つのに、四十年が長かったのか、今の私には分からないけれど、満たされていると感じている心は、確かなものである。



「写真を撮りましょう。」


そう言って、教会の扉の前に私達を並ばせ



「明日の練習ですよ。」


と、何度もシャッターを押した。



「麗ちゃん、神父様と二人で話していい?」


「うん。」



岩沢は微笑みながら


「裏庭に花壇がありますから、いかがですか。

綺麗ですよ。」



と、私を送ってくれた。



親子ほども歳の違うふたりに、何か、不思議な繋がりを見た気がした。










美しい花壇を眺めながら、バッグの中の携帯を取り出し、さっき たった一度だけ鳴って切れたその番号を見た。



見覚えのある番号の、美しい青年は、西山涼。


そう、ただの夫の友人。

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