『無明の果て』
若いというだけで、人にぶら下がり、流行りに躍らされ、引きずられた日々を、いつか話してみたいと思った。


私が愛した女性を、愛しいと思った大切な友の、人生を賭けた闘いを。




そして、ひたむきに挑戦を続ける昨夜の園の歌声を、ふっと思い出していた。




「M」の前でさよならと呟いた、昔の恋を。





「挙式の打ち合わせをしなくてはいけませんね。」



「実は、ふたりだけではないんです。


明日、両親と友人が来る事になりました。


麗子には言っていないのですが、その時まで秘密にしてくれと、麗子の父親からきつく言われています。



バージンロードを歩くのは私だと叱られました。」



「それは素晴らしい事ですね。


では麗子さんには内緒にしておきましょう。

祝福は多いに越したことはありませんから。」


「鈴木さんは小池君を知っていますね。」


「はい。
小池専務には麗子の特修でお世話になりましたので、結婚の報告をして来ました。

岩沢さんは、同期だったそうですね。」



「はい。
実は明日、ここに来る事になっています。」


「えっ、専務がですか?」



「鈴木さん達には申し訳ないのですが、私の神父姿を見届けると言って、本当は鈴木さんには伝えてはいけないと、釘をさされていましたが、それは麗子さんだけにしておきましょう。」

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