『無明の果て』
第十七章 『真実』
響き渡る鐘の音に包まれて、私と一行と、そしてもうひとつの命が、ライスシャワーの光を浴びながら暖かい拍手に包まれている。
父と母と、友人たちと、そして私が必死で築いて来たキャリアを認めてくれた、憧れの大人達が、私と一行の未来を見届けてくれている。
そして、思いもかけないものになった涙の挙式は、もうひとつの、年月を越えた真実を、私達の心の忘れられない場所へ運んで来る事になった。
誰もが通り過ぎる、切ない恋の続きを。
式の後、両親や友人達と離れた少しの時間を縫って、専務は私に言った。
「おめでとう。
良かったなぁ。
市川、綺麗だったぞ。
でもな、やっぱり、頑張りすぎるなよ。
仕事はいつでも出来るが、お腹の命は市川が守るんだから。
このままアメリカで生むつもりなのか?」
今まで知らなかった専務の、少し疲れた白髪まじりの横顔を眺めながら
「はい。
有難うございます。
これから相談して決めようと思います。
私だけの事ではないですから。
でも、せっかく専務にお世話頂いた特修ですので、辞める気はありません。
もう少しですから。
会社の件は、予定より少し遅れるかもしれませんが、夢がひとつ増えただけですから。
嬉しくて、怖いくらいです。
専務は岩沢さんに会いにいらしたんですね。」
「まぁ、そんな所だ。
いや、市川の事だって気になっていたのさ。
ん…そうか…
元気でいればいいんだ。
生きていればいいのさ…
そうなんだ…」
独り言のように呟き、太く強い声で私達の手を握り
「ふたりで頑張りなさい。
私は久しぶりに岩沢を誘って、会社の話でもしてみる事にするよ。
あいつが会社にいた頃は、ヒーローだったからな。
今だってそれは変わってはいない。
鈴木くらいの歳の頃に戻ってみるさ。
熱く語った青春とやらを思い出してみるか。
父と母と、友人たちと、そして私が必死で築いて来たキャリアを認めてくれた、憧れの大人達が、私と一行の未来を見届けてくれている。
そして、思いもかけないものになった涙の挙式は、もうひとつの、年月を越えた真実を、私達の心の忘れられない場所へ運んで来る事になった。
誰もが通り過ぎる、切ない恋の続きを。
式の後、両親や友人達と離れた少しの時間を縫って、専務は私に言った。
「おめでとう。
良かったなぁ。
市川、綺麗だったぞ。
でもな、やっぱり、頑張りすぎるなよ。
仕事はいつでも出来るが、お腹の命は市川が守るんだから。
このままアメリカで生むつもりなのか?」
今まで知らなかった専務の、少し疲れた白髪まじりの横顔を眺めながら
「はい。
有難うございます。
これから相談して決めようと思います。
私だけの事ではないですから。
でも、せっかく専務にお世話頂いた特修ですので、辞める気はありません。
もう少しですから。
会社の件は、予定より少し遅れるかもしれませんが、夢がひとつ増えただけですから。
嬉しくて、怖いくらいです。
専務は岩沢さんに会いにいらしたんですね。」
「まぁ、そんな所だ。
いや、市川の事だって気になっていたのさ。
ん…そうか…
元気でいればいいんだ。
生きていればいいのさ…
そうなんだ…」
独り言のように呟き、太く強い声で私達の手を握り
「ふたりで頑張りなさい。
私は久しぶりに岩沢を誘って、会社の話でもしてみる事にするよ。
あいつが会社にいた頃は、ヒーローだったからな。
今だってそれは変わってはいない。
鈴木くらいの歳の頃に戻ってみるさ。
熱く語った青春とやらを思い出してみるか。