『無明の果て』
第十八章 『魂』
「もしもし、園?」
「あら涼じゃない。
久しぶりね。
元気にしてた?
また勝ったって、この間新聞で見たわよ。
ずいぶん評判良いじゃない。
いよいよプロ騎士の夢も、現実的になってきたんじゃないの?」
Mが店じまいをすると噂で聞いた。
「お店辞めるってほんとなの?」
「うん。
今月いっぱいで私もここで歌えなくなるのよ。
私の店じゃないからしょうがないけど、どこか別のお店探さなくちゃって思ってる。
わざわざ足を運んでくれるお客さんもやっと出来て来たのに、うまくいかないものね。」
「そうか、残念だな。
そこのカウンターで、ひとりで聞く園の歌、好きだったのに。
店が無くなる前に聞きに行くよ。」
「そう、来てくれる?
待ってるからね。
実はね、この間のオーディションで最終まで残ってるんだ。
来週が本番。」
「へぇ~、園だってチャンスじゃない。
園の方こそ、デビュー決まるかもしれないなぁ。
そうか、すごいな。」
「そうだ。
ねぇ、涼。
教えてくれない?
涼なら分かる気がする。
目に見えているものだけが全てじゃないって、どういう事なんだろう。」
「ん?」
「オーディションで言われたのよ。
君の歌は悲しいだけだって。
現実の裏側にある今を見ていないって。」
「それって、楽園の歌詞の事言ってるのかな。」
「そうなんだろうけど、よくわからないのよ。
悲しいだけじゃ駄目なのかなぁ。
悲しくて、すごく悲しくて書いた詞だもの、悲しいだけの歌があったっていいと思うんだけど。
裏側だの、本当だの、そんな事じゃなくて、悲しいだけ。
そういうのって、伝わらないものなのかな。」
「あら涼じゃない。
久しぶりね。
元気にしてた?
また勝ったって、この間新聞で見たわよ。
ずいぶん評判良いじゃない。
いよいよプロ騎士の夢も、現実的になってきたんじゃないの?」
Mが店じまいをすると噂で聞いた。
「お店辞めるってほんとなの?」
「うん。
今月いっぱいで私もここで歌えなくなるのよ。
私の店じゃないからしょうがないけど、どこか別のお店探さなくちゃって思ってる。
わざわざ足を運んでくれるお客さんもやっと出来て来たのに、うまくいかないものね。」
「そうか、残念だな。
そこのカウンターで、ひとりで聞く園の歌、好きだったのに。
店が無くなる前に聞きに行くよ。」
「そう、来てくれる?
待ってるからね。
実はね、この間のオーディションで最終まで残ってるんだ。
来週が本番。」
「へぇ~、園だってチャンスじゃない。
園の方こそ、デビュー決まるかもしれないなぁ。
そうか、すごいな。」
「そうだ。
ねぇ、涼。
教えてくれない?
涼なら分かる気がする。
目に見えているものだけが全てじゃないって、どういう事なんだろう。」
「ん?」
「オーディションで言われたのよ。
君の歌は悲しいだけだって。
現実の裏側にある今を見ていないって。」
「それって、楽園の歌詞の事言ってるのかな。」
「そうなんだろうけど、よくわからないのよ。
悲しいだけじゃ駄目なのかなぁ。
悲しくて、すごく悲しくて書いた詞だもの、悲しいだけの歌があったっていいと思うんだけど。
裏側だの、本当だの、そんな事じゃなくて、悲しいだけ。
そういうのって、伝わらないものなのかな。」