『無明の果て』
園…


なんでそんな風に歌うんだ。


泣けてくるじゃないか。



誰も聞いていなくても、魂は叫ぶから。



そうやって生きて行ける力が 必ず楽園を見つけるはずだから。



歌い終えたのを確かめて、静かになった店から 一歩 一歩 ゆっくり歩き出し、路地から通りへ出ようとした時


「一行~」


「あ…」



息をきらして走って来た園は言った。



「来てくれるって思ってた。」



「園、どうして…」



「表に居るの見つけたのよ。

きっと聞いてくれてると思って頑張っちゃった。」




「園、何のために歌ってるんだよ。」



「その答えを探してるのよ。」




一筋、涙がこぼれ落ちた。

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