『無明の果て』
「いや…」



なんて返事をしたらいいのか分からず、言葉を探している間に園は言った。



「一行、ありがと。

あなたの幻と生きて行くのは、歌う時だけよ。


私の人生に一行が関係ないって突っ張っても、それはもう無理な事だけど、でももう大丈夫よ。



色々ありがとう。」




そう言って、そっと右手を出し顔をあげた。


涙の跡が少し光って、流れ星のように見えた。



そうして僕達は、短い握手をして別れた。



さっき走ってここまで来たのと同じように、園はまた 走って店まで戻って行った。



大通りへ出て、携帯を取り出し、いつか同じような場面があった事を思い出しながら、ボタンを押した。




「もしもし、麗ちゃん。

聞こえる?」
< 165 / 225 >

この作品をシェア

pagetop