密恋。~リスクのある恋~
………
「…り?瑠璃!」
「!」
突然耳に入ってきた声に、私はガバッと頭を上げた。
「瑠璃、大丈夫か?」
心配そうな声を出すのは、私の彼氏。
部活が終わって迎えに来てくれたらしい。
だけど、私の心は彼氏には向いていなかった。
マルスは――?
今の今まで触れ合っていた彼は―――
辺りを見回すけど、そんな姿はあるはずもなく。
…ということは、今のは夢?
こんなに、リアルに感触が残ってるのに?
「瑠璃?」
彼氏の呼び掛けに、ハッと我に返り、彼氏のことを見上げた。
見慣れた彼氏の表情に、ここは現実なんだと気付く。
「――あっ、うん!だっ、大丈夫!うとうとしちゃってた!部活終わったんだよね!?帰ろ!」
「うん。いつも待たせてごめんな?」
「大丈夫だよっ。好きで待ってるんだもん!」
…私は慌てていた。
何かいけないことをしたような、罪悪感みたいなものが襲ってきていたから。
実際に彼氏を裏切った訳でもないのに――。
だってあれは、ただの夢でしょう――?
私は右手で唇に触れる。
リアルに私の唇に残る、マルスの柔らかい唇の感触――…。
…本当に夢、だったの?
そう思いながら、机の上に置いていた本をパタンと閉じた。
…そこに刻まれた文字を、読むことなく。