密恋。~リスクのある恋~
 



CLOKのダンスレッスンが始まって3日目。


その日のレッスンが終わった後、廊下の隅っこに私はいた。

ある人と二人きりで。


「じゃあ、チハル。オレ先帰るな?」

「うん。…ヒロ、ごめんね?」

「チハルのせいじゃないだろ?仕方ないって。うちで待ってるから」

「うん…ありがと」

「ん」


ヒロがにこりと柔らかく笑いかけてくれる。

仕事では絶対に見せない、大好きな笑顔だ。


ヒロは事務所の先輩であり、彼氏。

ずっと憧れてた人で、私がダンサーになったきっかけの人だ。

仕事ではすごく厳しくて、みんなからも恐れられている。

そんな人とまさかこういう関係になれるなんて、付き合い始めた1年前までは夢にも思ってなかった。


別れ際、二人でキョロキョロと周りを見渡す。

…誰もいない。

顔を合わせて笑い合う。

そしてどちらともなく、唇をちゅっと軽く合わせた。


「――じゃあ、また後で」


 
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