密恋。~リスクのある恋~
 

「お疲れになったでしょう。これ、どうぞ」


不思議な感覚がした。

客人との距離が縮まるごとに、徐々に高鳴っていく鼓動。

その鼓動を感じながら湯飲みを差し出すと、客人は私と目を合わせた後、薄い唇に微笑を浮かべ、湯飲みを手に取った。

…近くで見ると、さらに美しさが際立つと思った。


「ありがとう。…名は?」

「え?」

「貴女の名だ」

「…小夜と申します」

「そうか。俺は土方と言う」

「…!土方…歳三、様!?」


土方って、あの!?

江戸や京から離れているこの土地でも幕府の犬と呼ばれていた新選組は有名で、特にその副長の名は多くの人が知っていた。

鬼の副長…手段はいとわない冷徹な男。

だから父もあのようなことを…


「…あぁ、俺のこと知っているのか。怯えなくてもいい。無意味に手は出しやしないから」

「…そういうわけでは」

「そう思われるのは慣れてる。ただ、俺は信念のままやってきただけで、後ろめたいことはないんだがな」

「…」


茶をすすった後、私を見上げたその表情はとても柔らかかった。

鬼になんて、見えなかった。

むしろ、その瞳は優しいのに寂しげで、孤独を強く感じるほどの暗闇が見えた気がした。

目が離せない…。

 
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