密恋。~リスクのある恋~
*
「少し休憩しましょうか」
カタカタと無心でミシンをかけていると、先生が声を掛けてきた。
私はミシンを止める。
「さすが器用ですね、椎名さんは。上手にできてますし、進めるのが早くて感心します」
「ありがとうございます!」
誉められた!
ただの生徒へのお世辞だったとしても、憧れの先生に誉められるなんて嬉しすぎる。
「そのシャツ、どなたに作ってるんですか?男性用でしょう?」
「あ、えと…彼氏に、と思ってます」
「そうなんですか…それは喜ばれるでしょうね」
「……そう、だといいですね」
「…椎名さん?」
「…」
シャツを作るとなっていて、最初に浮かんだのは彼氏の顔だった。
私が作ったシャツを着てもらえたら、どんなに嬉しいだろうと。
でも…
私の彼氏は受け取ってはくれても、きっと喜ぶ顔は見せてくれない。
今まで何度か手作りのものをプレゼントしたことがあるけど、一度も『ありがとう』を言ってもらえたことはないから。
…嫌がる雰囲気はないし、照れ隠しだよ、と私はいつも言い聞かせる。
でも、彼はもしかしたら私のことはそんなに好きじゃないのかな、なんて思うことも多くて。
私は彼のことが好きだから、やめることはできないんだけど…。
「…椎名さんは不器用なんですね」
「え?…器用、って言われる方が多いですけど…」
ふいに出てきた言葉に私は首を傾げる。
昔から何でも器用にできる方で、よく誉められてた。
今作ってるシャツだって、うまく作れてると思うんだけど…。
先生だって、さっき誉めてくれたでしょう?