密恋。~リスクのある恋~
*
…あ、また寝てる。
私は大講義室に入った瞬間、その姿を見つけた。
――この前見た、ネコ王子だ。
最近、ネコ王子が同じ授業を受けていて、私の1学年下の後輩だということを知った。
その日から、自然と彼のことが目に入るようになっていた。
私はネコ王子を眺めることができる場所に無意識に座る。
教材をバッグから取り出していると、
「――サトシ」
ある声が耳に入ってきて、私はその方向に目をチラリと向けた。
「――…ん……せんぱい?」
呼び掛けにネコ王子は顔をゆっくりと上げ、声を掛けた人物を見上げる。
ぽけらとしていて、寝惚け眼だ。
「これ、借りてたやつ。ここ置いとくから。ありがとな」
「んあ、はい…」
むにゃ、とまるでネコが顔を洗うように手で目を擦り、再び机の上に突っ伏した。
ぷ。
かわいい。
さすがネコ王子。
彼は完全に私にとっての癒しで、眠くてダルいはずの1時限目だというのに、毎回この時間が楽しみだったりする。
きっとネコ王子のことはずっと見ていても飽きない気がする。
なんかもう、かわいいんだもん。