密恋。~リスクのある恋~
 



いい天気。


授業が終わり彼氏と分かれた後、私は一人で何の目的もなく、大学構内をぷらぷらと散歩していた。

すると、ニャーとネコの鳴き声が植え込みの陰から聞こえてきた。

私はそっと、植え込みの向こうを覗く。

ネコ…?


「!」


ネコと目が合う。

そして、ネコを手に抱え、あぐらをかいた男の人の後ろ姿が目に入ってきた。


わ…ネコ王子だ…!


こんなに近くで見るのは初めて。

茶色の少しウェーブがかった髪の毛はすごくキレイで、ふわふわとしている。

触ったら気持ち良さそう。

いつもは遠くからしか見ないからわからなかったけど、意外と身体のラインは細くない。

…あ、そうか、サッカーしてたんだっけ。


…っとと。

観察してる場合じゃなかった。

あまり見てると、ただの変な人になっちゃうし、気付かれないうちにここを離れようっと。

私はそっとその場から去ろうとする。

でも。


「――待ってください。先輩の彼女さん、ですよね?」

「!」


くるりとネコ王子が私に顔を向ける。


「やっぱり」


後ろ向いてたのに、何で気付くの!

――気配?

もし気配を感じたとしたら、本当にネコみたいだ…。

それに…

何で私のことを知ってるの…?

 
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